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「『動いてるぞ』というところを、知らせたい気持ちがありました」尾崎世界観

「どっちにしても、新しかったですね」。クリープハイプの通算6作目となるアルバム『夜にしがみついて、朝で溶かして』について、尾崎世界観(Vo/G)はApple Musicに語る。「メンバーと会わずに曲を組み立てていく作業もあったし、いつも通り日常が少し戻ってきてスタジオで音を合わせることもあったし…」。そして、こう言い切る。「それはすごく作品に影響を与えてると思います」

前作『泣きたくなるほど嬉しい日々に』からは3年3か月ぶり。アルバムを早く出したいという思いは強かった。「特にコンセプトはなかったです。10周年ツアーが途中で止まって、そのまま中止になってしまったので、なんとかして形にして活動を、『動いてるぞ』というところを聴いてくれている方々に知らせたいなという気持ちがありましたね」。この間に配信でリリースした「愛す」「四季」「しょうもな」といった楽曲も含む全15曲が本作には収録されている。

アルバムタイトルは収録曲「ナイトオンザプラネット」の歌詞から取られている。同じ名前のジム・ジャームッシュ監督の映画を尾崎が観たのは高校2年生の冬、一人で過ごした大みそかの深夜だった。「なんとなく数合わせで借りて、そんなに期待してなかった1本だったのに、一人でとにかく過ごしてみようっていう心情にぴったりはまって。エンドロールを見終えた時に外見たら朝になってて、その時に『バンドやろうかな』と思ったんです。なんとなく」。まさに運命の映画だ。「それでバンド名を決めたいなと思った時に、(この映画の中の)セリフでHypeが出てくるんですけど、なんとなくそれを覚えていて。それを入れたんです」

かたや、サウンド面で積極的に試行錯誤を重ねた本作は、このバンド自体の始まりと現在形とをつなげる作品ともいえる。以下、アルバム中の気になる曲についてのエピソードを尾崎が話してくれた。

料理
料理やったことなかったし、本当にうまく料理できるかな? と思ってたんですよ。作る側としてはなじみがなくても、食べる側としては毎日やってる行為なので、やってみました。でも今、初めてご飯を作った人の気持ちがわかった気がする。こういう気持ちなんですね、「ごちそうさま、おいしかった」って言ってもらえるのって。

ポリコ
ものすごく思うところがあって作った曲。やっぱりそこは言っておかなきゃな、言わなきゃ気が済まないな、と。でも「クリープハイプらしく何か伝えるってどういうことかな?」と思いながら作った曲です。

一生に一度愛してるよ
最後に録った曲で、ファンの目線と恋愛をかけています。バンドに対しては「初期のほうが良かった」と言うのに、恋人に対しては「変わってほしい、新しくなってほしい」と言う、わがままな女性の目線で書いてみたんです。それは僕からのけん制というか「全部分かってるぞ」っていう気持ちですね。歌い方はすごく優しくしてるんですけど、テンポはものすごく速くしました。いろんなことが詰まった曲です。

ナイトオンザプラネット
「なんとなくこういう歌詞で」というのはあったけど、レコーディングの歌入れの時に悩みながら録っていきました。歌ってみたらキーが高すぎるし、それで語りにしてみたり、すごく難しかったです。メンバーには「どうなるか分かんないから外に出といてくれ」と言って、スタジオの外で待っててもらいました。エンジニアの方と2人でやったんですけど、恥ずかしかったですね。すごく照れながら…でも「恥ずかしいって大事だな」と思いました。歳を重ねていくと無理をしなくなるけど、新しいことをやってるということは、恥ずかしいってことなので。

しらす
カオナシ(ベースの長谷川カオナシ)が好きな童謡っぽい感じが全面に出ています。そろそろこういう曲をアルバムに入れてみてもいいのかなと思ってちょっと冒険してみたんですけど、すごくハマってますね。(この曲には)うちの甥っ子にコーラスを入れてもらいました。5歳と3歳なんですけど、下の子のほうはメロディを歌い切れてなくて、それが良かった。味があって。

なんか出てきちゃってる
単音のギターのリフの上に小川くん(ギターの小川幸慈)がコードを付けて、曲になったんです。歌詞というか言葉は一瞬で出てきました。「頭から出てるよ、お前、頭のねじ」、「そんな出てる? 取ったほうが良いのかな」みたいな、すごい気持ち悪い歌。デイヴィッド・リンチの映画『イレイザーヘッド』を観てたから、それに影響されたかも。

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